外勤営業職の勤務実態調査手法 | 愛知県を中心とした東海3県対応
外勤営業職・フィールドワーカーの労務管理が抱える課題
愛知県を中心とした東海3県(愛知・岐阜・三重)は、製造業や自動車関連企業が多く集積し、外勤営業職やフィールドワーカーの需要が高い地域です。名古屋市を拠点に広範囲をカバーする営業担当者や、工場や建設現場を巡回する技術者など、社外での業務が中心となる従業員の労務管理は、多くの企業が頭を悩ませる課題となっています。
特に近年、「働き方改革」の推進により労働時間の適正把握が強く求められる中、オフィスに常駐しない従業員の勤務実態を正確に把握することの重要性が高まっています。東海地方では自動車産業を中心としたサプライチェーンが広域に広がっており、営業担当者は1日で複数の拠点を移動することも珍しくありません。このような状況下では、移動時間や客先での待機時間など、労働時間の定義があいまいになりやすく、適切な管理が困難になるケースが見られます。
名古屋労働局の調査によれば、東海地方における労働基準監督署への相談事例のうち、外勤営業職の労働時間管理に関する相談は年々増加傾向にあり、2023年度には前年比15%増となっています。このような背景から、外勤者の勤務実態を客観的に把握し、適切に管理するための調査手法や体制整備が喫緊の課題となっているのです。
勤務実態調査の基本アプローチ
外勤営業職やフィールドワーカーの勤務実態を正確に把握するためには、複数のアプローチを組み合わせた総合的な調査が効果的です。愛知県内の企業での成功事例を分析すると、以下の基本的なアプローチが有効であることがわかります。
記録方法の確立と標準化
まず取り組むべきは、勤務実態を記録する方法の確立と標準化です。東海3県内の多くの企業では、以下のような記録方法を採用しています:
日報システムの活用:業務内容、訪問先、移動時間、商談時間などを詳細に記録できるデジタル日報システムを導入することで、業務の可視化が可能になります。名古屋市内のある自動車部品メーカーでは、タブレット端末を活用した日報システムを導入し、営業担当者の行動パターンを分析することで、非効率な移動ルートの改善や、特定地域での待機時間の削減に成功しています。
タイムカードの代替手段:物理的なタイムカードの代わりに、スマートフォンやタブレットを活用した勤怠管理アプリを導入する企業が増えています。特に東海地方の広範囲をカバーする営業担当者には、GPSと連動した打刻システムが有効です。岐阜県内の建設資材メーカーでは、営業担当者が初回訪問先と最終訪問先で自動的に打刻される仕組みを導入し、始業・終業時刻の客観的記録に成功しています。
自己申告と客観的記録の併用:従業員の自己申告だけでなく、後述する客観的記録(位置情報、通信記録など)と併用することで、記録の正確性を高めることができます。三重県内の医療機器メーカーでは、営業担当者の自己申告と社用車のGPS記録を照合する仕組みを構築し、移動時間の正確な把握に役立てています。
ヒアリング調査の実施
記録データの分析だけでなく、実際に外勤従業員からヒアリングを行うことも重要です。定期的な面談や匿名アンケートを通じて、以下のような情報を収集します:
標準的な1日の流れ:出社から帰社までの典型的な業務フローを時系列で聞き取ります。名古屋市内のある医薬品卸では、MR(医薬情報担当者)の1日の行動パターンを詳細に分析し、待ち時間の多い医療機関への訪問スケジュールの最適化に活用しています。
移動パターンと時間:訪問先間の移動にかかる平均時間や、よく使用する経路などを聞き取ります。愛知県豊田市を中心に活動する自動車関連企業の営業担当者からは、工場間の移動に予想以上の時間がかかっているという実態が明らかになり、訪問計画の見直しにつながった事例があります。
業務上の課題や非効率な点:客先での待機時間が長い、移動経路が非効率、書類作業に時間がかかるなど、業務上の課題を聞き取ります。東海3県を広域に担当する住宅設備メーカーの営業担当者からは、顧客訪問の合間に車内で行う報告書作成に多くの時間を費やしているという声が上がり、モバイル端末を活用した報告システムの導入につながりました。
サンプル調査の実施
全従業員を対象とした詳細調査が難しい場合は、代表的なサンプルを選定して詳細な調査を行う方法も効果的です。東海地方の地域特性を考慮したサンプル選定のポイントは以下の通りです:
地域バランス:名古屋市内中心の営業エリア、愛知県西部・東部、岐阜県南部、三重県北部など、エリア別の営業特性を考慮したサンプル選定が重要です。各エリアでの移動時間や訪問件数には大きな差があるため、バランスの取れたサンプリングが求められます。
経験年数:新人と熟練者では業務効率や行動パターンに差があるため、異なる経験年数の従業員をバランスよく選定します。愛知県内のある卸売企業では、経験年数別のサンプル調査により、熟練営業担当者のノウハウを新人研修に取り入れ、業務効率の向上に成功した事例があります。
業務内容:純粋な営業活動、技術サポート、アフターフォローなど、業務内容によって行動パターンが異なるため、様々な職種から選定することが望ましいです。特に東海地方の製造業では、営業と技術サポートを兼務するケースも多く、業務の複合性を考慮したサンプリングが重要となります。
客観的記録の活用方法
外勤者の勤務実態を正確に把握するためには、自己申告だけでなく客観的な記録を活用することが不可欠です。東海地方の企業で活用されている主な客観的記録は以下の通りです:
GPS・位置情報の活用
社用車やスマートフォンのGPS機能を活用することで、外勤者の移動経路や滞在場所を客観的に記録することができます。東海3県内での活用事例としては:
社用車のGPS記録:社用車にGPS装置を設置し、移動経路や駐車位置、走行時間などを記録します。愛知県内の建設機械レンタル会社では、社用車のGPSデータを活用して営業担当者の移動時間を正確に把握し、効率的な訪問ルートの策定に役立てています。特に名古屋市内や東名・名神高速道路周辺の渋滞を考慮した訪問計画の最適化に効果を発揮しています。
業務用スマートフォンの位置情報:業務用のスマートフォンアプリを通じて位置情報を記録し、訪問先での滞在時間などを把握します。岐阜県内の医療機器メーカーでは、MRの業務用スマートフォンに専用アプリを導入し、医療機関での滞在時間を自動記録することで、実労働時間の正確な把握に成功しています。
位置情報と勤怠管理の連携:特定の場所(客先や営業所など)に到着した際に自動的に打刻される仕組みを構築することも可能です。三重県内の住宅設備メーカーでは、主要取引先や営業所にジオフェンス(仮想的な地理的境界)を設定し、営業担当者がその範囲に入った際に自動的に業務開始・終了の記録が行われるシステムを導入しています。
ただし、GPS・位置情報の活用にあたっては、プライバシーへの配慮が不可欠です。東海地方の企業では、業務時間外はGPS記録を行わない、プライバシーポリシーを明確に策定するなどの対応が一般的です。愛知県内のある企業では、従業員代表との協議を経て、GPS記録の利用目的と範囲を明確に定めた協定を締結し、透明性の高い運用を実現しています。
通信記録・システムログの活用
業務用端末の通信記録やシステムへのアクセスログも、勤務実態を把握する上で有用な客観的記録となります:
メール送受信記録:業務用メールの送受信時刻から、実際の業務時間を推定することができます。名古屋市内の商社では、早朝や深夜のメール送信が常態化していた営業部門に対して、メール送信記録を基にした実態調査を行い、過重労働の実態を把握した上で業務改善につなげた事例があります。
社内システムのアクセスログ:営業支援システムや顧客管理システムへのログイン・ログアウト記録も、業務時間の推定に役立ちます。愛知県内の製造業では、モバイル端末からの社内システムアクセス記録を分析し、休日や深夜の業務が常態化していた営業担当者を特定し、個別指導を行った事例があります。
クラウドサービスの利用記録:社内文書や報告書の作成・編集履歴も重要な記録となります。東海地方の多くの企業では、クラウドベースの文書作成サービスやグループウェアを導入し、外勤者の業務記録を可視化しています。岐阜県内のある企業では、クラウドサービスの利用記録分析により、外勤営業担当者の約3割が22時以降も定期的に業務を行っていることが判明し、業務改革のきっかけとなりました。
業務用アプリケーションの活用
外勤者向けの業務アプリケーションを導入することで、より詳細な業務実態の把握が可能になります:
訪問管理アプリ:訪問先、訪問時間、商談内容などを記録するアプリを活用することで、業務の可視化を図ります。名古屋市を拠点とする食品卸では、訪問管理アプリの導入により、営業担当者の1日あたりの実働時間と移動時間の比率が明確になり、担当エリアの最適化につながりました。
業務報告アプリ:日報や商談記録を効率的に入力・共有できるアプリを導入することで、業務内容の詳細な記録が可能になります。三重県内の機械メーカーでは、音声入力機能を備えた業務報告アプリを導入し、移動中の車内でも安全に報告書を作成できる環境を整備しています。
勤怠管理アプリ:GPS連動型の勤怠管理アプリを導入することで、位置情報と連動した正確な勤務時間の記録が可能になります。愛知県豊橋市を拠点とする建材メーカーでは、勤怠管理アプリと社用車のGPSを連携させ、移動開始時間と終了時間を自動記録するシステムを構築しています。
移動時間・待機時間の取扱い
外勤者の労働時間管理において特に難しいのが、移動時間や待機時間の取扱いです。東海地方は広域に渡る産業集積地であり、名古屋市を中心に放射状に広がる移動経路をどう労働時間として扱うかは多くの企業が直面する課題です。
移動時間の労働時間該当性
一般に、業務のための移動時間は原則として労働時間に該当します。ただし、以下のような場合は例外的に取り扱われることがあります:
直行直帰の場合:自宅から直接訪問先に向かう場合、通常の通勤時間に相当する部分は労働時間から除外できる可能性があります。例えば、名古屋市内在住の営業担当者が通常の出社であれば30分の通勤時間がかかるところ、同程度の移動時間で到達できる客先に直行する場合は、その移動時間を労働時間から除外している企業もあります。
出張における移動:遠方への出張における移動時間の取扱いは、移動中に実質的な業務指揮下にあるかどうかで判断されます。愛知県内のある企業では、東海3県を超える遠方出張の際の新幹線や飛行機での移動時間について、業務指示がなく自由に過ごせる時間は休憩時間として扱う旨を就業規則に明記しています。
東海3県内の企業では、「実質的な業務の拘束下にある移動時間」を労働時間として認めるケースが増えています。例えば、愛知県内のある製造業では、社用車での移動中に携帯電話での商談や社内会議への参加を求めている場合には、その全時間を労働時間として認定するルールを設けています。
待機時間の労働時間該当性
客先での待機時間や商談間の空き時間については、その実態に応じた取扱いが必要です:
完全拘束型の待機:顧客都合による待ち時間でも、待機場所が指定されていたり、いつでも業務に戻れる態勢を求められている場合は労働時間に該当します。東海地方の自動車関連企業では、取引先工場での待機を求められるケースが多く、その時間を労働時間として認める企業が増えています。
自由利用可能な待機:次の訪問まで時間に余裕があり、自由に過ごすことが認められている場合は、休憩時間として扱うことも可能です。ただし、この場合は明確なルール化が必要です。名古屋市内のある商社では、訪問間の空き時間が1時間以上ある場合に、従業員が申告することで休憩時間として扱う制度を導入しています。
実態調査の結果、東海3県内の多くの企業では、待機時間の取扱いに関するルールがあいまいなままになっているケースが多く見られます。特に製造業が集中する愛知県西部では、取引先工場での待機が長時間に及ぶケースも報告されており、明確なルール化が急務となっています。
移動・待機時間の管理事例
東海地方の企業における移動・待機時間の管理事例としては、以下のような取り組みが見られます:
移動時間の可視化と最適化:愛知県豊田市を拠点とする自動車部品メーカーでは、社用車のGPSデータを分析し、頻繁に渋滞が発生するエリアや時間帯を特定。訪問スケジュールの最適化により、営業担当者の移動時間を平均15%削減することに成功しています。
待機時間の有効活用:岐阜県内の建設資材メーカーでは、客先での待機時間を報告書作成や情報整理の時間として有効活用できるよう、モバイルオフィス環境を整備。待機時間の労働時間化と業務効率向上を同時に実現しています。
地域特性を考慮した移動時間ルール:名古屋市中心部、愛知県西部(豊田・刈谷エリア)、三重北部など、地域ごとの交通事情を考慮した標準移動時間を設定し、異常値の検出に活用している企業もあります。特に名古屋高速や東名高速の渋滞を考慮した余裕ある移動時間設定が特徴的です。
自己申告の信頼性向上策
外勤者の労働時間管理において、一定程度の自己申告は避けられません。しかし、自己申告の正確性を高めるための工夫が必要です。東海地方の企業で導入されている主な施策は以下の通りです:
申告しやすい環境づくり
正確な自己申告を促すためには、申告しやすい環境づくりが重要です:
簡便な申告システム:スマートフォンやタブレットから簡単に勤務時間を申告できるシステムを導入することで、申告の手間を軽減します。名古屋市内のIT企業が開発した外勤者向け勤怠管理アプリは、東海地方の多くの企業に導入されており、GPSとの連携や簡単な操作性が評価されています。
リアルタイム申告の奨励:業務終了後にまとめて申告するのではなく、業務の開始・終了時にリアルタイムで申告することを奨励します。三重県内の卸売企業では、訪問先到着時と退出時に簡単な操作で記録できるアプリを導入し、申告の正確性が向上した事例があります。
罰則ではなく改善を重視:申告内容と客観的記録に差異があった場合も、まずは原因究明と改善を重視する姿勢が重要です。愛知県内のある製造業では、GPS記録と自己申告に差異があった場合、懲罰的な対応ではなく、なぜ差異が生じたのかを面談で確認し、申告方法の改善につなげるアプローチを採用しています。
教育と意識づけ
正確な労働時間申告の重要性について、継続的な教育と意識づけが必要です:
労働時間管理の法的側面:労働基準法の基本的な考え方や、労働時間の適正把握の重要性について、定期的な研修を実施します。名古屋労働局管内では、外勤者向けの労働時間管理に特化したセミナーも開催されており、これを活用している企業も増えています。
健康管理との関連付け:正確な労働時間申告が従業員自身の健康管理にもつながることを強調します。岐阜県内の企業では、産業医と連携して外勤営業職向けの健康管理セミナーを開催し、適正な労働時間管理の重要性を訴求しています。
管理職への教育:外勤者を管理する立場の管理職に対して、労働時間管理の重要性と適切な指導方法について教育します。愛知県内のある企業では、管理職向けに「外勤者の労働時間管理」に特化した研修プログラムを導入し、部下の適正な労働時間管理を評価項目に加えています。
クロスチェック体制の構築
自己申告の信頼性を高めるためには、複数の記録を照合する仕組みが有効です:
客観的記録との照合:GPS記録、システムログ、通話記録などの客観的データと自己申告内容を定期的に照合します。名古屋市内のある企業では、月に1度、無作為に選んだ日の自己申告内容とGPS記録を照合し、大きな乖離がある場合は個別にヒアリングを行う仕組みを導入しています。
業務内容の検証:申告された労働時間と業務内容(訪問件数、商談内容など)の整合性を検証します。三重県内の企業では、営業支援システムに記録された活動内容と申告労働時間の関係を分析し、不自然な申告パターンを特定する取り組みを行っています。
同行調査の実施:定期的に上司や人事担当者が外勤者に同行し、実際の業務フローと時間を確認します。愛知県内の製薬会社では、MRに対する定期的な同行調査を実施し、申告内容の妥当性を検証するとともに、業務効率化の施策を検討する材料としています。
労働時間管理ツールの選定と導入
外勤者の労働時間を適切に管理するためには、効果的なツールの選定と導入が不可欠です。東海地方の企業における主なツール導入事例は以下の通りです:
ツール選定のポイント
地域特性を考慮した効果的なツール選定のポイントは以下の通りです:
モバイル環境への対応:スマートフォンやタブレットから簡単に操作できることが重要です。特に東海地方の製造業集積地では、工場内など通信環境が制限される場所でも使用できるオフライン対応機能が重宝されています。
GPS・位置情報連携:位置情報と連動した記録機能があると、移動時間の正確な把握が可能になります。特に名古屋市を中心とした放射状に広がる営業エリアをカバーする企業では、GPS連携機能の重要性が高く評価されています。
既存システムとの連携:営業支援システムや基幹システムとのデータ連携が可能なツールを選定することで、二重入力の手間を省きます。東海地方の多くの製造業では、生産管理システムや顧客管理システムとの連携を重視したツール選定が行われています。
カスタマイズ性:業種や企業特性に応じたカスタマイズが可能なツールを選定することで、より実態に即した管理が可能になります。愛知県内のITベンダーが提供するツールの中には、東海地方の製造業の商習慣に特化したカスタマイズ機能を備えたものもあります。
推奨ツールと導入事例
業務プロセス連動型:営業支援システムや顧客管理システムと連動し、業務の進行状況から労働時間を把握するタイプのツールです。愛知県豊田市の自動車部品メーカーでは、商談記録システムと連動した労働時間管理を実現し、業務内容と労働時間の整合性チェックを自動化しています。
AI分析型:蓄積された勤怠データをAIで分析し、不自然なパターンを検出するタイプのツールです。名古屋市内のIT企業が開発したシステムでは、過去の行動パターンと照合し、明らかに逸脱した申告を自動検出する機能が好評を得ています。
複合型モバイルソリューション:勤怠管理、業務報告、経費精算などの機能を一体化したモバイルアプリです。三重県内の食品メーカーでは、外勤営業担当者向けに複合型アプリを導入し、業務効率の向上と労働時間の適正把握を同時に実現しています。
導入・運用のプロセス
ツールの導入・運用を成功させるためのプロセスは以下の通りです:
現状分析と要件定義:まず、現在の勤務実態と課題を詳細に分析し、必要な機能を明確にします。愛知県内のある企業では、1ヶ月間のサンプル調査を実施し、外勤者の行動パターンを詳細に分析した上でツール選定を行ったことで、的確な要件定義につながりました。
パイロット導入と検証:全社導入の前に、一部の部署や社員を対象としたパイロット導入を行い、使い勝手や有効性を検証します。岐阜県内の建材メーカーでは、最初に10名の営業担当者を対象にパイロット導入を行い、課題を抽出・改善した上で全社展開したことで、スムーズな導入に成功しています。
教育・研修の徹底:導入後は、全ての利用者を対象とした教育・研修を徹底します。名古屋市内のある企業では、eラーニングと対面研修を組み合わせた段階的な教育プログラムを実施し、高い定着率を実現しています。
継続的な改善:導入後も定期的な利用状況の分析と改善を繰り返します。三重県内の企業では、四半期ごとに利用状況を分析し、操作性の改善や新機能の追加などを継続的に行うことで、長期的な活用に成功しています。
労使協定の整備
外勤者の労働時間管理を適切に行うためには、労使間の合意に基づく協定の整備が重要です。東海地方の企業における労使協定の整備事例は以下の通りです:
必要な労使協定の種類
外勤営業職やフィールドワーカーの労働時間管理に関連する主な労使協定は以下の通りです:
事業場外みなし労働時間制に関する協定:労働時間の算定が困難な事業場外労働について、みなし労働時間を定める協定です。名古屋市内の商社では、営業エリアごとに標準的な業務量と移動時間を調査した上で、適切なみなし時間を設定した協定を締結しています。
フレックスタイム制に関する協定:外勤業務の特性に合わせた柔軟な労働時間管理のために、コアタイムの設定などを定める協定です。愛知県内の医薬品メーカーでは、MRの訪問先に合わせた柔軟な時間設定を可能にするフレックスタイム制を導入し、効率的な訪問計画と適正な労働時間管理の両立を実現しています。
変形労働時間制に関する協定:繁忙期と閑散期のある業種において、労働時間を弾力的に設定するための協定です。岐阜県内の建設資材メーカーでは、季節による需要変動に対応するため、1年単位の変形労働時間制を導入し、外勤営業担当者の労働時間の平準化に成功しています。
36協定(時間外・休日労働に関する協定):時間外・休日労働の上限を定める協定です。三重県内の製造業では、外勤営業職の特性を考慮した特別条項付き36協定を締結し、繁忙期における適正な時間外労働管理を実現しています。
協定内容のポイント
外勤者特有の労働環境を考慮した労使協定の主なポイントは以下の通りです:
移動時間の取扱い:直行直帰時の移動時間や、訪問先間の移動時間の取扱いを明確に定めます。名古屋市を中心とした放射状の営業エリアを持つ企業では、エリアごとの標準移動時間を設定し、それを超える場合の取扱いを明記した協定を締結している事例があります。
待機時間の取扱い:顧客都合による待機時間の取扱いについて、労働時間とみなす条件を明確にします。愛知県西部の自動車関連企業では、取引先工場での待機時間について、一定条件下で休憩時間として扱う基準を労使間で合意し、協定化しています。
記録方法と確認プロセス:労働時間の記録方法や、記録内容の確認プロセスを具体的に定めます。名古屋市内のある企業では、GPS記録と自己申告の乖離があった場合の確認・修正プロセスを詳細に規定し、透明性の高い運用を実現しています。
プライバシーへの配慮:GPS記録など位置情報の取得・利用について、プライバシー保護の観点からの制限を明記します。東海地方の多くの企業では、業務時間外のGPS記録は行わないことや、収集したデータの利用目的を限定することなどを労使協定に明記しています。
労使協定締結のプロセス
効果的な労使協定を締結するためのプロセスは以下の通りです:
実態把握と課題整理:まず現状の勤務実態を詳細に調査し、課題を整理します。愛知県内のある企業では、外勤者へのアンケートと面談を通じて労働時間管理上の課題を可視化し、労使協議の基礎資料としました。
従業員代表との協議:課題と解決策について、従業員代表と十分な協議を行います。岐阜県内の企業では、外勤者を含む部署から選出された従業員代表と、数回にわたる協議を行い、現場の実態に即した協定内容を検討しました。
試行期間の設定:本格導入前に試行期間を設け、運用上の課題を抽出します。三重県内のある企業では、3ヶ月間の試行期間を設定し、その間の問題点を労使で協議・改善した上で正式な協定を締結しました。
定期的な見直し:締結後も定期的に運用状況を確認し、必要に応じて内容を見直します。名古屋市内のある企業では、半年ごとに労使協議の場を設け、協定内容と運用実態の乖離がないかをチェックする仕組みを構築しています。
外勤者特有の労務管理課題と対策事例
東海3県の企業が直面する外勤者特有の労務管理課題と、その対策事例を紹介します:
長時間労働の実態把握と防止
外勤者は労働時間が見えにくいため、知らず知らずのうちに長時間労働に陥りやすい傾向があります:
課題:自動車産業が集積する愛知県西部では、取引先の要請に応じた早朝・深夜の訪問や、納期対応のための休日出勤が常態化している事例が多く報告されています。特に中小企業の営業担当者では、大手企業の生産スケジュールに合わせた対応を求められるケースが多く、長時間労働のリスクが高まっています。
対策事例:名古屋市内のある自動車部品メーカーでは、客観的記録(GPS、システムログなど)と自己申告を組み合わせた「可視化ボード」を導入し、部署ごとの労働時間傾向を「見える化」しました。特に長時間労働の傾向がある部署や個人には、業務プロセスの改善や担当エリアの見直しなどの対策を講じることで、全社の時間外労働を前年比20%削減することに成功しています。
また、三重県内のある企業では、営業担当者の担当エリアを「訪問時間」を基準に再編成し、移動負荷の平準化を図ることで長時間労働の防止につなげています。従来の「顧客数」や「売上高」ベースではなく、実際の業務負荷を考慮した担当割りを行うことで、特定の担当者に負荷が集中する状況を改善しました。
健康管理の課題
オフィスから離れて働く外勤者は、健康状態の把握や管理が難しいという課題があります:
課題:東海地方の広範囲をカバーする営業担当者は、長時間の運転や不規則な食生活などによる健康リスクが高まりがちです。特に、自動車での移動が中心となる東海地方では、運転による身体的負担や、移動中の食事の質の低下などが問題となっています。また、オフィスワーカーに比べて産業医との面談機会も少なく、体調不良のサインを見逃しやすい環境にあります。
対策事例:岐阜県内のある企業では、外勤者向けの「モバイルヘルスケア」プログラムを導入し、スマートウォッチを活用した健康データのモニタリングと、産業医によるオンライン健康相談を組み合わせた健康管理体制を構築しています。特に運転時間の多い営業担当者には、定期的な休憩を促すアラート機能や、簡単なストレッチを促す通知機能が効果を発揮しています。
また、愛知県内のある企業では、月に一度の「健康リフレッシュデイ」を設定し、この日は原則として外勤を行わず、健康診断や産業医面談、健康セミナーなどを集中的に実施する取り組みを行っています。通常であれば面談機会の少ない外勤者と産業医の定期的な接点を確保することで、健康リスクの早期発見につなげています。
コミュニケーション不足の課題
外勤者は社内でのコミュニケーション機会が少なくなりがちで、情報共有や帰属意識の低下などの課題があります:
課題:東海3県の広範囲をカバーする営業担当者やフィールドワーカーは、オフィスへの出社頻度が少なく、上司や同僚とのコミュニケーション不足に陥りやすい状況にあります。特に新人や経験の浅い外勤者は、業務上の相談や報告の機会が限られ、孤立感を抱きやすい傾向があります。また、会社の方針や重要情報の伝達も遅れがちになるケースが見られます。
対策事例:名古屋市内のある企業では、外勤者向けの「バーチャルオフィス」環境を構築し、チャットやビデオ会議を活用した日常的なコミュニケーションの活性化に成功しています。朝のオンラインミーティングや、定期的な「オンライン昼食会」などを通じて、物理的に離れていても心理的な距離を縮める工夫を行っています。
また、三重県内のある企業では、「メンター制度」を外勤者向けにカスタマイズし、経験豊富な先輩社員が定期的に新人に同行する機会を設けています。この「同行メンタリング」により、OJTの機会確保とメンタルケアの両立を図り、新人外勤者の定着率向上につなげています。
評価・処遇の課題
外勤者の業績評価においては、労働時間と成果のバランスをどう評価するかという課題があります:
課題:外勤営業職の評価は、売上や受注といった成果指標が重視されがちで、長時間労働によって成果を上げる風潮が生まれやすい環境にあります。特に東海地方の製造業関連企業では、「顧客の要望には何としても応える」という文化が根強く、労働時間より成果を優先する傾向が見られます。また、勤務実態が見えにくいため、努力のプロセスが適切に評価されないというケースも報告されています。
対策事例:愛知県内のある企業では、外勤営業職の評価制度を改革し、「労働生産性」を重視した評価体系を導入しました。具体的には、「売上÷実労働時間」という指標を導入し、単純な売上高ではなく、時間あたりの生産性を評価することで、効率的な働き方を促進しています。この改革により、「長時間労働=評価が高い」という従来の風潮が変化し、計画的で効率的な営業活動が奨励される文化が醸成されています。
また、岐阜県内のある企業では、「プロセス評価」の比重を高めた評価制度を導入し、訪問計画の適切性や顧客情報の収集・分析力、時間管理能力などを評価項目に加えています。これにより、単純な売上成績だけでなく、持続可能な営業活動のための基盤構築も適切に評価される仕組みを実現しています。
東海3県における業種別の特徴と対応策
東海地方の主要産業における外勤者の勤務実態調査の特徴と効果的な対応策を紹介します:
製造業(自動車・機械関連)
特徴:愛知県を中心とした自動車産業集積地では、完成車メーカーを頂点としたピラミッド構造の中で、サプライヤーの営業担当者が広域を移動するケースが多く見られます。特に、トヨタ自動車を中心とした愛知県西部(豊田市、刈谷市など)と、名古屋市内の本社を行き来する営業パターンが特徴的です。また、取引先工場での待機時間が長くなりがちで、労働時間の定義があいまいになるケースが多いという特徴があります。
対応策:愛知県西部の自動車関連企業では、以下のような対応策が効果を上げています:
– 取引先ごとの「標準訪問時間」を設定し、待機時間を含めた適切な訪問計画を策定
– 工場訪問時の「待機ルール」を明確化し、一定時間以上の待機は申告により休憩時間として取り扱う仕組みを導入
– 取引先との商談予約システムを導入し、不必要な待機時間の削減を推進
– 同一工業団地内の複数取引先を効率的に訪問できる「エリアルーティング」の最適化
卸売・小売業
特徴:名古屋市を中心に、愛知県全域、さらには岐阜県南部や三重県北部まで広域をカバーする営業パターンが特徴的です。特に、食品卸や日用品卸では、1日あたりの訪問件数が多く、短時間の訪問を繰り返す営業スタイルが一般的です。このような状況では、移動時間の比率が高く、効率的なルート設計が労働時間管理の鍵となります。
対応策:名古屋市内を拠点とする卸売企業では、以下のような対応策が採用されています:
– AIを活用した最適ルート設計システムの導入による移動時間の最小化
– エリア担当制からチーム担当制への移行による、訪問負荷の平準化
– 訪問先のグルーピングと曜日分散による効率化(同一エリアの顧客を特定曜日にまとめて訪問)
– タブレット端末を活用したペーパーレス商談の推進による業務効率化
建設・不動産業
特徴:東海地方の建設・不動産業では、現場監督やサイトエンジニア、物件案内担当者など様々な外勤者が活動しています。特に、名古屋市内と郊外の住宅地・工業団地を往復するパターンが多く、移動距離が長くなる傾向があります。また、天候や顧客の都合による予定変更が頻繁に発生し、労働時間の予測が難しいという特徴があります。
対応策:東海地方の建設・不動産企業では、以下のような対応策が効果を上げています:
– 現場と事務所間のリアルタイム情報共有システムの導入による無駄な移動の削減
– 悪天候時の代替業務計画の事前策定による労働時間の安定化
– 物件案内のオンライン化(バーチャルツアー)による移動負荷の軽減
– エリア特化型の組織体制への移行による移動距離の最小化
サービス・IT業
特徴:東海地方のサービス・IT業界では、客先常駐型のエンジニアや、顧客サポート担当者などの外勤者が多く活動しています。特に自動車関連企業のIT部門を支援するエンジニアは、客先での業務が中心となるため、労働時間管理の責任の所在があいまいになりがちです。また、トラブル対応などで急な残業が発生するケースも多く、労働時間の予測が難しいという特徴があります。
対応策:名古屋市内を拠点とするIT企業では、以下のような対応策が採用されています:
– 客先常駐者向けの労働時間管理ガイドラインの策定と徹底
– 客先と自社の双方がアクセスできる勤怠管理プラットフォームの構築
– リモートサポート体制の強化による不要な緊急訪問の削減
– トラブル対応用のバックアップ体制確立による特定担当者への負荷集中の防止
まとめ:効果的な勤務実態調査のポイント
東海3県における外勤営業職・フィールドワーカーの勤務実態調査を効果的に行うためのポイントをまとめます:
1. 地域特性を考慮した調査設計
東海地方の産業構造や地理的特性(名古屋市を中心とした放射状の移動パターン、自動車産業を中心としたサプライチェーンの広がりなど)を考慮した調査設計が重要です。エリアごとの移動時間や訪問パターンの差異を理解し、実態に即した調査を行いましょう。
2. 複数の調査手法の組み合わせ
自己申告、GPS記録、システムログなど、複数の調査手法を組み合わせることで、より正確な実態把握が可能になります。特に、客観的記録と自己申告の両方を活用することで、データの信頼性を高めることができます。
3. 従業員との協力関係の構築
調査の目的が「監視」ではなく「適正な労働環境の実現」であることを明確に伝え、従業員の協力を得ることが重要です。プライバシーへの配慮や調査結果のフィードバックなど、信頼関係を構築するための取り組みを忘れずに行いましょう。
4. 継続的な改善プロセスの確立
一度の調査で終わらせるのではなく、定期的な調査と改善のサイクルを確立することが重要です。労働環境や業務内容は常に変化するため、調査手法や管理体制も継続的に見直す必要があります。
5. 労使の対話と合意形成
調査結果に基づく対策や制度変更については、労使間の十分な対話と合意形成を行うことが重要です。一方的な制度導入ではなく、現場の声を反映した実効性のある対策を講じることで、持続可能な労務管理が実現します。
外勤営業職・フィールドワーカーの勤務実態調査は、単なる労働時間管理の手段ではなく、業務効率化や従業員の健康管理、ひいては企業の持続的成長を支える重要な取り組みです。愛知県を中心とした東海3県の企業が、地域特性を踏まえた効果的な調査と対策を行うことで、外勤者にとっても、企業にとっても価値のある労働環境が実現することを願っています。
当社の調査サービスについて
当社では、愛知県を中心とした東海3県の企業向けに、外勤営業職・フィールドワーカーの勤務実態調査サービスを提供しています。地域特性を熟知した専門コンサルタントが、御社の課題に合わせたオーダーメイドの調査プランを提案いたします。
特に名古屋市、豊田市、岐阜市、四日市市などの主要都市をカバーする広域営業体制を持つ企業向けに、エリア特性を考慮した効率的な調査方法をご提案可能です。まずはお気軽にご相談ください。
本記事の監修者

田中代表
代表取締役社長
ブエナヴィーダ株式会社
資格・専門性
- 公認システム監査人(CISA)試験合格
- 公認不正検査士(CFE)試験合格
経歴
- 内部監査室室長
- 外務省在外公館専門調査員
代表の田中は、企業の内部監査室室長として社員の不正等を監査し、また、外務省在外公館専門調査員として外国公務員贈賄防止等に尽力した経験を持つ専門家です。
現在は、ブエナヴィーダ株式会社の代表として、その豊富な経験と専門知識を活かし、社内不正調査業務を指揮しています。